良い音楽を届ける仕事とは?  ~行達也はゆく~ その3 タワーレコードレーベル編

その1 タワーレコードバイヤー編
その2 モナレコード店長編
番外編 CDショップ大賞について語る
その3 タワーレコードレーベル編



モナレコードを退職します!!

 Shiggy.Jrのヒットにより、モナレコードは大変順調に見えた。しかし、2014年の末、モナレコードの退職を発表した。なぜこのタイミングで?
「もう10年経ったしというのもあるけど、Shiggy.Jrが売れたのは大きかった。良かった反面、そこに時間をかけざるをえない状況となり、手が行き届かなくなったカフェの売り上げが下がってしまった。そこに違和感を持ち、そのようにどこか油断すればすぐ売りあげが下がるっていう商売をしていくのがしんどいと思ってしまったんです。その時に、Shiggy.Jrの成功例もあるし、自分で曲を書いていたバンド(ユメオチとルルルルズ。ユメオチは2014年9月に解散。ルルルルズは店長退職と同時に脱退)も結構評価されたから、そうやって人をプロデュースしたり曲を提供したりということを仕事にしてもやっていけそうだなと思い店長を退職しました。俺ホント演奏ヘタクソで、ちゃんとやるんだったらそっちだな、と」
PVの右の部屋にちょっと映って機材を触っているのが行さん
彼らとともに多くの時間を過ごしていた


次を見据えていかないと今後は置いていかれる

CDショップ大賞実行委員長とモナレコード店長を離れ、タイミング良く人手が足りていなかったというタワーレコードのレーベル事業部部長として現在働いている行さん。古巣に戻ってきた形ではあるが、販売する側であったバイヤーから、自社レーベルで発売する側へと変わった。主な業務内容は、発売したいと思う良い音楽を探すこと。そのため日中は売り込み作品の対応と、YouTubeやSoundCloudのブラウジング等をし、夜にはライブハウスにも出向く。新しい環境での挑戦に試行錯誤しながらも楽しんでいるという。
「たまたま今まではShiggy.Jr等の良いミュージシャンが自分と近い距離にいたのだけど、今後はそこに甘んじず、次は何かということを見据えていかないと置いていかれるんだろうなとは思っています。そこは今作戦を練っているところです」
―すでに決まっているものはありますか?
「いろいろ面白いものを出せると思うけど、どちらかというと来年に大暴れするつもりなので、今年はとりあえず実績を作る。これはこの業界に限ったことじゃなくてどこでも言えることだけども、実績作ったらあとは好きなことやれるから。足場を固めるってのは大事です。まずはギターロック。ライブを見に行っても単純に楽しいと思えたバンドをリリースします。これでつまんねー!とかだったらこういう仕事を辞めるべきなんだろうけど、こうやって全面的に楽しめる自分がいて良かった!」
2015年5月末に新レーベル「illumitantion」をMC.sirafu氏(ザ・なつやすみバンド, cero, etc...)と立ち上げ、現在音源募集中!


プロデュースの極意 今年のテーマは暗躍?

現在、渋谷や下北沢のライブハウス界隈では人気だが、全国的にはまだまだ知名度が低いミュージシャンが数多く存在する。行さんは下北沢で、そういったバンドを近い距離で見てきた。
―良い音楽を広く届けられるようにするには、レーベルに限らず音楽に関わっている人達がどう意識するべきなのでしょうか?
「ただ良いと言うだけではなくて、それがどう良いかということを回りくどくせずに一発で。まずは自分自身でよくその人達を理解し、それをいかに上手にプレゼンできるかという技術が必要だと思います。それは例えば言葉だけじゃなくビジュアルやデザインによる所が大きかったりするから、総合力だと思います。タイミングもそう。例えばさよならポニーテールのT-Palette(タワーレコードのアイドルレーベル)移籍をどう見せようかと考えた時、ただナタリーなどでニュース打つだけつまんないからと先にタワーレコードのエプロンをつけたメンバーのビジュアルだけ出すってどう?と言ってみたり。今後は誰かと組みながらそういった面白いことができていければ良いと思っています。俺、今年のテーマは暗躍ってことでやってるんだけどネット番組も始めるし全然暗躍になってないっていうか、めっちゃ前出てるやん(笑)」
タワーレコードのアイドルレーベル「T-Palette」への
移籍発表に2週間ほど先立ってこの投稿のみが公開された。
実体を持たないさよポニこそ、本当のIdol(偶像)? 



CDとCDショップ パッケージだから出来ること


―一連のお仕事をしてきた中で、CDとCDショップというメディアが今担っている役割はどのような物だと考えていますか?
「音楽自体は家やスマホでダウンロードできるので、CDショップの存在意義っていうのは例えば、女の子に俺これ知ってるんだぜって自慢するデートスポットだったり、何か服を買いに来たついでにCDを買っちゃおうということができたり、あとはイベントの場所だったり。そしてイベントを見に来た人が並べられた関連作品を手にとったりできるというのはパッケージを売っているお店だから出来ることですよね」
―私も何か買いに行ったついでにこれも新譜出てたんだと買ってしまうことは多いです。
「そういう人が増えたらいいんだけどね。こればかりはどうにもならないしどうにもできるもんじゃない。世の中の流れには抗えないからね」


い音楽を届ける仕事〟 ここが一番得意だろうって!


 バイヤー、モナレコード店長、CDショップ大賞実行委員長、そして現在のレーベル運営と、行さんは様々な職業を経験してきたが、冒頭で述べたようにこれらはすべて〝私達へ良い音楽を届ける〟ための仕事である。
―おかげ様で私達は様々な良い音楽に触れることができているのですが、このように裏方寄りのポジションで音楽を届けようとし続けている理由を教えて下さい。
「商売として、仕事として俺が実力を出せるのはそこしかないから。もっと聴かれるべき音楽もたくさんありますし。自分で作った曲の提供などもやりつつだけどね。お店の店員とかもできるんだけど、しんどいし、ここが一番得意だろうって!」
―居心地もいいですか?
「そうだね。大変だけど、楽しいから!」

立場は変われども、音楽に対する見方はずっと変わっていない。嫌いなものでも気持ちを偽ってプッシュすることはせずに、素直に良いと思えたものをいかにビジネスベースにのせるかという挑戦を続けている。そこが揺らいできたら退任も辞さない。〝良い音楽を届ける仕事〟をしている人は根っから音楽を愛し、楽しんでいる人だった。行さん、今後もこのような仕事を続けていくつもりですか?
「とりあえずね。やめろって言われるまでは(笑)」


-END


今回の音楽!

 

(´-`).。oO(ユメオチは色々な音楽をインプットしてきた行さんのこれまでの結晶。さよポニのほうはスペシャルサンクスに行さんがいますね。何でしょう。どちらも必聴!)

なお、インタビューに出てきたギターロックの新レーベル「too basara's people records」も始動しています!まずはフィッシュライフ!



その3 タワーレコードレーベル編

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