伝説の社交場への憧れ
思いがけず窮地に立たされてしまったものの、頭の中には次の仕事の構想があった。以前より行さんは、60年台に港区飯倉片町に開店した伝説のイタリアンレストラン「キャンティ」に憧れていたという。開店当時のその店は、ミュージシャン、俳優などの文化人が集う社交場であった。
「キャンティのような様々な文化が混ざり合って何かが生まれる場所を、下北沢のライブハウスにいるようなバンドやそのお客さん、さらには絵を描いたり写真を撮ったりする人までもを巻き込んで作りたかったんです。それを実現するには、ライブハウスだけだと難しい。カフェという要素が重要だった。CDが買え、食事ができ、ライブスペースもある店。絶対に面白いと自信がありました」
必死だったフリーター時代 でもその頃が一番…
そして自ら企画書を書き、音楽関連会社へ出資を頼みに回る生活が始まった。
「みんな最初は面白がってくれるんだけど、金かかりすぎ!と言われ。そうですよね…って(笑)。その間は必死に音楽関係のラジオとか、ライター業とか、ありとあらゆることをしながら食いつないでいました。音楽好きで良かった。タワー時代の繋がりもあったからラッキーでした。でも今考えたらその頃一番稼ぎ良かったよ。月100万くらい!」
そのような生活を2年続け、ついに出資をしてくれる会社と巡りあう。株式会社ウルトラ・ヴァイヴの事業部の1セクションとして、モナレコードが始動した。
手探りの店長業 何とか工夫せなあかん
細い路地の細い階段を登るとそこがモナレコード |
下北沢駅南口から徒歩1分という好立地に店を構えるモナレコード。食事もしっかり出来るカフェスペースとその雰囲気に合ったインディーズの良質なCDが並ぶ販売スペースが共存する「おんがく食堂」に、100人程収容可能なライブスペースが併設された“小さな音楽総合施設”である。店舗で取り扱っているCDはインターネットでも通信販売で購入することができ好評だ。
店長としての日常の業務は様々である。ライブ出演者と次の展開を考えたり、皿洗いを手伝ったり、接客も行なう。前例がない形態のため、店長業は全て手探りだった。
「経営の知識等は全くありませんでしたが、仕組みは【売上-コスト=粗利益】という様にシンプル。ただ、その中に税金がかかるとか、JASRACに使用料を払うとか、そのようなことは色々勉強しました。親会社の指導でコスト管理というのはすごく言われていて、それプラス自分らで何とかして工夫せなあかんという意識。うまく店を運営していくためにはこの2つがやはり大きかったですね」
―店舗側ではどのような工夫をしていたのでしょうか?
「当初はCDは売れずカフェもお客さんが来ず苦しい状態でした。そのため力を入れるバランスを考え直したんです。CDに関しては基本的に自主制作盤の委託販売で、売値一枚500円の物が儲け200円程度。さすがに商売にならない。もちろんこのカフェスタイルの店の雰囲気に合うCDの仕入れも考えますが、メインはライブハウスと飲食店で賄うという感じになりました。そしてカフェならこういうパフェが、ライブならこのアーティストが、この組み合わせがいいんじゃないかという様なことを、常にコスト意識しながら考えていました。結局ビジネスなのでそこが重要なんです」
カフェスペース。チキンカレーが人気。
お座敷席とテーブル席があり親子連れにも利用しやすい。
3F建てビルの2Fに入居。
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CD販売スペース。
食事スペースと同じフロアの一角にある。
ライブスペースは別フロア(3F)となる。
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救世主Shiggy Jr. そのヒットから
試行錯誤の結果、毎年黒字経営を実現。才能を発掘する「モナレコード レーベルオーディション」。その第三回グランプリとなり、行さんのプロデュースによりモナレコード自社レーベルからアルバムをリリースしたバンド、Shiggy Jr.は店舗の枠を超え大ヒットした。
「シンプルにポップで良いと思ったし、彼らはセルフプロデュースがとてもうまかった。ちょうど時代に求められているものと合致したというのもあると思います。池田智子という存在を含めて」
―可愛い声の女の子がいて、男の子がいて、ちょっと青春臭くて、という感じですね。
「それはこないだタワーの社長とも話していたんですが、アイドルが形を変えたものなのかもしれないと思っています。パスピエなども。当分そういう感じが続くのかなぁって思っています。楽曲派と言われるアイドルが最近ずっと売れていることからも。Shiggy Jr.はそこに上手く乗り、自分たちを魅せることが出来たと思います。レーベルの救世主現る!という感じでした」
(´-`).。oO(モナで見たYeYeのライブが素晴らしかったんです…)
その1 タワーレコードバイヤー編
その2 モナレコード店長編
番外編 CDショップ大賞について語る
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