2015年下半期の5枚!


今年、J-POPが面白い!
ぜひ多くの人に聴いてほしいアルバムあつめました。
上半期はこちら
試聴はiTunesへのリンクで。画像はamazonに飛びます。


Bittersweet(土岐麻子)  (iTunes)

 
「都会で暮らす不惑の女性のサウンドトラック ~女は愛に忙しい~」をテーマに、
土岐さんが大人の恋愛を歌う。

一曲目「セ・ラ・ヴィ ~女は愛に忙しい~」の歌い出しがとても良い…
「三度目の運命の恋はただの人違い」なんて歌詞、若手には出てきません。

39歳の土岐さんだからこそ歌える、女性の恋愛観をジャズの要素が入った
上質な音楽に乗せて。
最近は経験を積んだ女性歌手のポップミュージックが本当に面白い。
3曲目「さよなら90's Girl」のように、針の穴に糸を通すような緊張感が
ありながらも適度にリラックスした、するすると抜けていくような声の泳がせ方。
これはキーボードが一番グルーヴを作っているのだけど、それ含めて総合的に
気持ちよさを作っています。ほとんどの曲に言えること。
繊細な演奏と歌声の「間」と「重なり」が非常に気持ち良いところで両立してるんだ…

そして「君と恋をしてたことも とっくに恋が終わったことも そしていま悲しいことも 
 誰ひとり 誰ひとり 知らないだなんてね」(ラブソング)といった歌詞に漂う諦め
にも似た儚さ。染みる。

世田谷ボーイに心惹かれてしまったりしながら、女は強く生きていくのだ。



娑婆ラバ(パスピエ) (iTunes)

パスピエメジャー3rdアルバム。

1曲目「手加減のない未来」の、ドラムがぐいぐい引っ張るサビが、このアルバム
全体の雰囲気を押し上げている!
たぶんタイアップも沢山あって、シングルも結構出していたのだけど、シングルでは
響かなかったような曲たちがこのアルバムの中に入ることで力を増して聞こえました。
メジャー1st「演出家出演」をめちゃめちゃ聴いていて、でも2nd「幕の内ISM」は
なんかオイ!オイ!なフェス文化に飲まれちゃった感があってあまり聴いてなかった
のですが、今作も路線としては変わったわけではありません。
4つ打ちにキャッチーなシンセなどレベルの高い演奏が乗っかり、さらに大胡田
なっちゃんの特徴的な歌声でがっつり掴みに来る感じ。でも今回良いなと思うのが、
音がすごく開けているように感じたところ。

純粋に音いいな!ってのもあるのだけど、アップテンポな曲でもミドルテンポな曲
でも各楽器にエネルギーが溢れているなぁ…それも疲れてるときに聞くとウッ、
勘弁して下さいってタイプのエネルギーではなくて聞き心地良い。

大胡田さんの声は本当は耳に刺さって痛そうなタイプなんですが、それほど不快
じゃないのは楽曲全体のバランスが取れてるからなんでしょうかね?
6曲目「贅沢ないいわけ」なんて、もどかしいけど力強くい歌詞も良く大好きです。

ミュージカルのような展開が面白い10曲目「ギブとテイク」は新境地かも。
UnBordeレーベルらしく、世間への露出は増えてるけどあいかわらず写真や映像
としては顔をあんまり見せない謎姿勢を貫くパスピエ。初期のころの相対性理論
ライクな雰囲気からは一皮抜けて、あたまひとつ抜きん出た貫禄出てきました。


YELLOW DANCER(星野源) (iTunes)


YouTubeで公開された「時よ」や「Week End」、さらに先行の「SUN」などを聞いて、
あれ、そういうダンサブルな感じになっちゃったの?と思っていたのですが、
アルバムをちゃんと聴いたら全くイケイケウェイウェイなアルバムではなかった。

源さんは自身の好きなブラックミュージックに自分の色を加えて「イエローミュージック」
にしようと挑戦していたとのこと。
さて、2曲目「Week End」聞き直すと、なるほどコーラスの感じなど黒人音楽だこれ!
「September」だ!

黒人音楽へのアプローチはカクバリズムの後輩:ceroも「Obscure Ride」でおこなって
いたけど、異なる方向性。
で、こんな明るく聞こえて踊れ踊れといった感じなんですが、サビの伴奏はなんだか
寂しいし歌詞も胸に響くし毎回聴いてうるんでるわたし。
「今を踊るすべての人に捧ぐ 君だけのダンスを、世間のフロアに出て叫べ!!」

「時よ」「Week End」「SUN」「桜の森」など踊りやすい曲は、アルバムの色を作る
重要な曲だし、ライブでも人気曲になるのだろうなと思うけど、バラード「Snow Men」
のような従来の源さんらしい曲もまた深化してるなぁ…と思うし、明暗双方のバランス
が絶妙。

12曲目の東京下町さんぽソング「Down Town」はホントさんぽに最適。
そこからの次曲への落差もなおよし。
踊れる曲が多いので打ち込み路線かと思ったけど、全曲アナログシンセ生録音で、
さらに実際はシンセよりも生ストリングスがグルーヴ作ってたりするのがすごく面白い。
ドラムカースケさん、ギター浮雲、ベースハマくんという体制の曲がずらりと並んでおり、
演奏も高水準。全国の浮雲ファンのお腹も満たします。(ペトロールズ新譜も聞いて下さいね)
細野晴臣さんベースと他の楽器全部源さんの短い中間小休止的インスト「Nerd Strut」
も最高です。

ただの明るいアルバムではないということを理解して聴くとすべての曲の味わいが深くなる。
全14曲!お腹いっぱいだけどリピート余裕です。


Welcome to Jupiter(矢野顕子) (iTunes)


上半期おすすめ時に予感してた通りの良作!

まず「Tong Poo」でしょう!全体の雰囲気は浮遊感ありますがYMOのオリジナルに
似せたような音が挟まれてたりしてて聴き応えバツグン!


前作に引き続きさまざまなミュージシャンと共作をしているわけですが、とりわけ
3曲目「そりゃムリだ」の岸田繁さんが良いです。ダメダメ前向きな歌詞をもっと
明るい方に連れてってくれるそりゃムリだおじさんのコーラス。そりゃムーリだ〜

タイトル曲「Welcome to Jupiter」はtofubeatsによるもの。聞き心地良い電子音
上にすばらしく表情豊かな歌声が!贅沢なポップ・ミュージック。
前作から支え続けるAZUMA HITOMIさんとの「わたしと宇宙とあなた」等はもう
矢野さんの活かし方かなり掴んじゃってるんじゃないでしょうか…矢野さんの歌声の
魅力はグワっとした歌い上げにあるとおもうのですが、もうツボをおさえまくっております。
今まででいちばんでっかい空を突き抜けるよオーぅ!!

矢野さんのハイレベルなコラボテクノポップはどこまで行ってしまうのか…



円盤ゆ〜とぴあ(さよならポニーテール)  (iTunes)


今年のポップミュージックを語る上で欠かせない一枚!
イラストでしか姿を確認できていない、正体不明のミュージシャン集団さよポニ。
T-Palette移籍後初のアルバムはCD(円盤)が一番輝いていた時代のあれこれ
をさよポニのフィルターを通してアウトプットするというコンセプトで作られた3枚組。
価格は税込み3,333円。発売日は11/3。謎の3縛り。

物理媒体であるからできる体験、ということでiTunesに取り込んでも自動で曲名が
降ってこず、歌詞カード等を見ながら自分で入力させられるという手の込みっぷり…(?)
曲数が多すぎて簡単には語れないのですが、渋谷系から続く良きポップミュージック
さよポニを象徴する「メタ・ネタ・ベタ」と絡め非常に色とりどりな作品に。
(なお、追ってiTunesでも購入できるようになったようです)

女の子の青臭い恋の歌で始まったかと思えば、ノリノリギターリフやぶりぶりベース、
曽我部さんとの甘いデュエット、疾走感あふれるテクノポップ、妙にエモいギターソロなど
楽しい「A面集で恋をして」がdisc1。
2曲目「すーぱーすたー」は、クラムボンがたまにやるひねくれたボーカルを彷彿と
させられる冒頭のメロがキャッチー。色んな音がなっていて賑やかな全力の女の子
応援ソング。

それに対しいつの時代だよ!という感じの最後の曲「光る街へ」などは確かにA面曲だけど
振り幅が恐ろしいです。
アニメのOP風のPVには先のインタビュー記事のお相手、ユキさんの名前も登場しています。


disc2はYouTubeで音源化予定もなく公開し続けてきた毎月のうたをまとめた
「さよポニ・カレンダー」。
前作までではメインボーカルを務めることがなかったゆゆの歌声が際立つ楽曲多し。
正月の曲から始まる構成はピチカート・ファイヴ「さ・え・ら ジャポン」を連想させられ、
11月(勤労感謝の日)の「勤労と感謝」はいかにもピチカート風の楽曲。
小西さんを意識したというクロネコ氏のコーラスがすごく良い。

6月「天気予報の恋人」はフィッシュマンズやソウルセットを連想する静かなラップ曲。
というようにさまざまな音楽の要素が入ったこれがまさしく「円盤ゆ~とぴあ」なんだ…
9月の岸田メル先生の歌声が素敵なデュエット曲からの勢いが本当にすばらしく、
最後の卒業ソング以外はすべてYouTubeで聴けるので探してみてください。

disc3「思春期の光と影」はメインメンバーであるみぃなの弾き語り曲で構成された
初期さよポニを彷彿とさせるつくり。イラストの見てくれからは想像つかない落ち着いた
歌声が気持ち良いです。
disc1, disc2を聴いた後だとなおさら味わい深く感じる。



なお、本作「円盤ゆ~とぴあ」には収録されていない「円盤ゆ~とぴあ」という曲が
YouTubeに発売後公開されていて…
しかしPVの背景となっているイラストはユートピアが滅びたディストピア…
そしてこの曲で歌っているのは音楽の未来そのもの…
CDの元気がなくなった円盤でぃすとぴあな現代を、これからさよポニはどう泳いで
いくのか、期待。

コメント